紫蘇
『紫蘇』の原産地は中国南西部およびミャンマー地域とされ、日本には縄文時代に伝わり、奈良時代には栽培も始まって、平安時代の医学書『本草和名』には、「薬や漬物に用いられた」との記録が残る日本人には馴染みの深い葉野菜です。
『青じそ』と『赤じそ』に大別され、それぞれ葉に縮みのないものと、縮みのよる「ちりめんじそ」があります。
青じそは近年ハウス栽培が進み年間を通して流通するようになっていますね。ただし赤紫蘇の出荷シーズンは夏に限られます。
その名からも分かるように、元来『紫蘇』は紫の葉の『赤紫蘇』のみだったのが、その赤色を呈する成分『アントシアニン』を含まない緑の葉をもつ変種『青紫蘇』が生まれ、「赤」「青」2種が存在するようになった経緯があるそう…。
アントシアニンはポリフェノールの一種で、ブルーベリーやナス、紫イモなどにも含まれている紫色の色素です。人間が摂取すると目の疲れを取ったり、視力を向上させたりする効果があるとしてサプリメント各種も販売されて、注目の成分ですね。そのアントシアニン…赤紫蘇には太陽光から身を守るために備わっているというのです。
植物は日光を浴びて光合成しますが、太陽光が強すぎると、光葉緑体の中で活性酸素が発生して光合成機能を十分発揮できなくなってしまいます。赤紫蘇のアントシアニンは太陽光を吸収し、葉緑体にあたる光の量を調節することで葉の健康を保つ働きを担っているというわけ。
赤紫蘇でも、生えている場所によっては大葉と同じように緑色をしていることがあるのだそう…!??。これは、太陽光が強くない場所ではアントシアニンによって葉緑体を太陽光から保護する必要がないため、アントシアニンが発達せず、葉緑体の緑色が見えているのだと考えられるそうで、こうして生まれた緑の紫蘇が『青紫蘇』の祖先かもしれませんね。
『紫蘇』と『大葉』って…?
『大葉』は、青じそを食用の香味野菜として販売するにあたり使われるようになった呼称です。1960年頃 青じそを販売する際に、紫蘇の「芽」と「葉」の区別が必要となり、葉の方に『大葉』という商品名をつけたところ、全国的に定着して今に至っている…というのが経緯のよう。
実力派の緑黄色野菜
青紫蘇、赤紫蘇ともビタミン類・ミネラル類を豊富に含み、
①粘膜を強化して免疫力を高め、風邪やガンを予防する。
②血糖値の上昇を抑え、血流をよくし、体脂肪を下げる。
③免疫抑制効果を発揮し、アトピーや花粉症等のアレルギーを抑制する。
④強い殺菌、防腐作用をもつ。
と、ありがたい効能づくめ…たいへん健康効果の高い緑黄色野菜としてもっともっと利用したい野菜です。
それを示すかのように漢方医学では…赤紫蘇の葉を「蘇葉:そよう」または「紫蘇葉:しそよう」とよび、気が停滞している状態を改善し、精神を安定させる目的で『神秘湯』『半夏厚朴湯』『香蘇散』などに配合されてきた歴史があるとのこと…。
熟した果実は「蘇子:そし」と呼ばれ、咳・喘息・便秘などの治療に用いられているというのですから、素晴らしい!
独特の香りも魅力ですね。その香りの素は精油成分『ペリルアルデヒド』で、この精油こそが抗菌・防腐作用、食中毒予防、食欲増進、健胃・消化促進などに貢献する成分。葉の裏にある腺鱗(せんりん)に含まれていて、組織が割れると精油が気化することで立ちのぼります。
精油成分『ペリルアルデヒド』は揮発性で時間がたつと飛んでしまいますから葉裏を強く触らず、食べる直前に刻むのが上手な使い方といえそうです。
初夏に旬を迎える赤紫蘇梅干しやしば漬け、紅生姜を鮮やかに染めるほか、乾燥させて「ゆかり」にしたり、シロップに漬けてしそジュースにしたりと幅広い用途で使われますね。
梅干しは漬けない私ですが、赤紫蘇を使ったお気に入りレシピをご紹介します。
赤紫蘇は葉の張りやみずみずしさをチェックして新鮮なものを選び、香りのよさ(強さ)に差があるので、確認してから求めましょう。
大葉(シソ)に比べてえぐみが強いため、灰汁抜きしてから使います。
赤紫蘇のアク抜き…塩もみ赤紫蘇の作り方