パーキン とガイ・フォークス・デイ             

11月5日イギリスでは『 Guy Fawkes Day ガイ・フォークスディ』が祝われてきました。

1607年に起きた上院議場爆破未遂事件の実行犯 ガイ・フォークスを模った人形を作って街中を引き回し、夜になるのを待ちかねて広場に焚いたかがり火に人形を投げ入れます。人形からあがる炎でいっそう明るくなった夜空をさらに華やかに彩る花火を打ち上げて気勢を上げる…  街中では爆竹がなり、庭でバーベキューを楽しんだり、花火をして楽しむ家庭も多いイギリスの秋の風物詩でした。

近年は安全面などから焚き火や花火についての規制、禁止が厳しくなり、現在は地域単位で行うことが多く、広場に大きな篝火を焚き、勢いよく燃える炎で暖をとりながら、冬の夜空に上がる花火を楽しみます。

焚き火をして人形を燃やすことから『Bonfire Night』ともいわれ、イギリス人が大好きなグリューワインやエールビールを用意して、焚き火の残り火でジャガイモを焼くのが古くからのお楽しみ…子供たちが屋台のトフィーアップル(りんご飴)やキャンディーフロス(わた飴)を買ってもらってご機嫌なのも変わりまあせん。そして、ガイ・フォークス・ディといえば…のジンジャーブレッド『パーキン 』もこの日になくてはならないスィーツとして健在です。

『パーキン 』がこのガイ・フォークスディと結びついたその経緯はといいますと、イングランド北部やスコットランドでは昔から11月 収穫したばかりのフレッシュオーツを使って各家庭で『パーキン』焼かれてテーブルに登り、また収穫祭や教会の行事の際にも登場して人気を集めていました。

こうしてパーキンに親しんで育ち、長じて土地を離れた人たちが11月フレッシュオーツが出回る季節 になると、子供の頃食べた味と香りを懐かしく想い、各地で故郷のレシピで『パーキン』を焼いて楽しんだため、イングランド全土に広まったのです。

それはちょうど11月5日の『ガイ・フォークスディ』と重なって、さらにガイフォークスの出身地がヨークシャーだったこともあり、『ガイ・フォークスディ』には『パーキン』を!は揺るがないペアリングになったのです。

60年ほど前ペルーからロンドンにやってきたパディントン・ベアがはじめてガイ・フォークスディの花火に遭遇した時のこと パディントンがグルーバーさんにたずねると…

「ここではね、花火は1年に1回しかやらないんだ。

11月5日にね。」とグルーバーさんが言いました。

それからグルーバーさんは、何年も前 議会を爆破しようという陰謀があったこと、それ以来、この日はたき火と花火でお祝いをするようになったことなどを、いろいろ話してくれました。シリーズ第2話『パディントンのクリスマス』(1959年)第4章Paddington and the Bonfire(松岡享子訳)

1607年に起きたこの国王ジェームズ1世暗殺および上院議場爆破未遂事件は実行直前に企てが露見し、国会議事堂の地下室に大量の爆薬と共に潜んでいた実行責任者ガイフォークスらは捕らえられ、処刑されました。この陰謀の失敗と国王の無事を祝って行われるようになったのが、『ガイ・フォークスデイ』です。

9月の末ともなるとイギリス中の至る所で子供たちが古着やボロ布で『ガイ人形』を作って、「A penny for the Guy! ガイのために1ペニーおくれ~!」と言いながら街を歩き、大人たちからお小遣をもらいます。それを元手に花火を買ったり、お菓子を買ってガイ・フォークスディを楽しんでいたのですが、近年は安全のため子供が花火を買うことは禁止になってしまいました。

(左)Daily Mail  (右)Museum of London   1960年代の写真

「A penny for the Guy! 」の声が聞こえてきそう…

(左)1827年に描かれた最も古い画像の1枚 by George Cruikshank

(右)Museum of London 50~60年前の写真

1780年に出版された『マザー・グースのメロディー』に事件を題材にした童謡がみられます。

Remember, remember, the 5th of November

The gunpowder, treason and plot;

I know of no reason why gunpowder treason

Should ever be forgot.

Guy Fakes, Guy Fawkes,

T'was his intent,to blow up the king and the Parliament.

覚えておいて 覚えておいて 11月5日のことを

火薬陰謀事件のことを あの反逆事件を

忘れてよいわけがない

ガイフォークス ガイフォークス

彼の目的は王様と議事堂を吹き飛ばすこと…

そしてジョン・レノンは『Remember』の最後に「…11月5日を思い出せ」と歌っています。

: 

about the way it's gone

Don't you worry

about what you've done

No no remember,remember

The fifth of November

リバプール出身の ジョン・レノン …ガイフォークスディーのお祭りとパーキンの思い出が重なっていたかもしれません。