バジル …半年間のお付き合い

イタリア語由来の「バジリコ (Basilico) 」でも知られる「バジル」はインド及び熱帯アジア地域を原産とするシソ科のハーブです。世界中に広がり、今では150種類もの栽培品種が存在するそう。

熱帯にある原産地では多年草で、大株の茎は幹のようにも見え、もはや「ハーブ」:「草」というより小さな「木」の様相ですが、日本では越冬が難しいため1年草扱いとなり、「半年間のお付き合い」というわけです。

日本でもおなじみの『スイートバジル』…鮮やかな緑色の大きく柔らかな葉、スパイシーな香りが魅力でイタリア料理に欠かせない存在ですが、紀元前300年代にアレキサンダー大王が東方遠征の際にヨーロッパに持ち帰り、広まったとされています。日本の夏が大好きで、栽培も容易なので我が家でも毎夏栽培する常連さんです。

英語で「聖なる」を意味する言葉「ホーリー」を名前にいただく「ホーリーバジル」は現代医学でさまざまな薬効が認められた代表的なメディカルハーブです。インドでは「トゥルシー」と呼ばれ、伝統医学アーユルヴェーダでは「不老不死の霊薬」とされ、その薬効で人々の心と体を長い間癒してきました。

古来「トゥルシーの植えられた場所は平和と敬愛と美徳の地となる」と信じられてきたため、寺院の周囲にはたくさんのトゥルシーが植樹され、膝丈ほどに群生して聖域を感じさせてくれます。そしてどの家にも必ず1鉢 家の守り神さまとして大切にされています。

スイートバジルよりも香りが強く、スパイシーな刺激の中にミントのような清涼感が感じられ、加熱しても風味が飛びにくいため、炒めもの、揚げものなどさまざまな料理に使われて、葉っぱは乾燥させたてトゥルシーティーに…と、とても身近なハーブでもあります。

タイでの呼称は「ガパオ」『ガパオライス』に使われるのもこの「ホーリーバジル」です

世界には『レモンバジル』、『ライムバジル』、『シナモンバジル』、『アニスバジル』、『ルビーバジル』に『アフリカンブルーバジル』さらには『レタスバジル』…と150種!多彩です。

ポット苗の植え付けは…

4月に入るとポット苗が出回りますが、関東地方では5月の連休までは遅霜が降りることがあり、ひとたび霜が降りれば南国原産のバジルは一晩で弱って萎れてしまいますから、植え付けは連休明けを待ってから。

3号ポットに小さい苗が密集して芽を出しているものと、10cmほどまで育っている苗が3~4本植わっているもの…私は育てやすさから10cmの少数苗派…

たっぷり量のジェノベーゼソース作りを目指すので、40~50cmほど間隔をあけて、根を崩さないようにして植え付けます。苗の数が多いようなら、太くて元気なものを2~3本残して摘み取って、摘まれた苗は食材に… 

我が家の一隅に設けたハーブガーデンでは、40cmの間隔をとって植え付けたバジルの間に、後方に植えたセージが割り込んで… 6月初旬の光景です。↓

長く収穫を楽しむための3つのポイント

① 新芽の上を摘み取ります。…5月後半 陽射しが強くなり、気温が上ってくるとぐんぐん成長しますから、株が大きくなるのをまって収穫開始!先端の葉2~3枚を茎ごと摘み取ります。その下の葉の付け根には新芽(葉)がすでにスタンバイしていて伸び始め、そこで枝分れして広がるため、葉の数が倍、倍に増えてこんもり大株に育ちます。

② 2週に1回は栄養補給 水やりも怠りなく…バジルは成長の早い健康優良ハーブですが、その分栄養補給は欠かせません。2週に1回ほどのペースで有機肥料を根元にすき込む作業は大切で、怠ると成長がにぶって、元気もなくなるので忘れずに…成長が進み、葉が大きくなると水分の蒸散も早いので、土の表面が乾いたらたっぷり水を与えます。

③ 花芽が伸びたら摘み取ります。夏から秋にかけて先端に蕾をつけるようになりますが開花を放任していると、葉が硬くなり風味も落ちるので、蕾はこまめに摘み取ります。

作業のローテーションは…

8月に入り株が大きく育ったら草丈の半分ほど切り戻しを断行 このタイミングでジェノベーゼソースを作ります。背丈が半分になっても1ヶ月ほどかけてまたこんもりと茂り、収穫量も回復しますから、ここでまたジェノベーゼソース作りが実現するといったローテーション

天敵には負けず!でも共存も受け入れて…

天敵は「おんぶバッタ」と「真っ黒てんとう虫」と「ベニフキノメイガの幼虫」無農薬栽培が基本なので、株が大きく育っていれば、バッタやてんとう虫の食料分くらいは大目にみよう!の気持ちになれるもの。

蜘蛛の巣のような白い糸が絡まって葉っぱが丸まっていたらベニフキノメイガの幼虫がその中に潜んでいるので、葉ごと処分 虫の発生は株が大きく丈夫に育った夏場にあたるので、日に1、2度巡回すれば大惨事にまでは至りません。

☆大きく育った苗は11月末まで収穫し、利用できます。秋は葉が堅くなってくるので、ペーストにして利用または冷凍保存しておいて使います。

目にゴミが入ったら、「目ぼうき」にお任せしましょ!

食用に使われるのは葉っぱのみにあらず!『スィートバジル』の種は東南アジアではれっきとした人気食材なのです。

イやベトナムではココナッツミルクや、ガムシロップにバジルシードを混ぜて飲まれることが多いのですが、近年日本でも同様の飲料が発売され、お馴染みになってきましたね。

バジルシード自体には匂いも味もありませんが、水に浸けると、真っ黒な表面を透明なゼラチン状の膜が覆い始め、10分もすれば30倍にも膨らみ、その見た目はさながらカエルの卵!

日本には江戸時代に漢方薬として伝来しましたが、このカエルの卵状になったものを目に入れるとゴミが取れるというので、『目箒 めぼうき』との和名をもらっています!

バジルシードには、こんにゃくと同じ水溶性食物繊維グルコマンナンが多く含まれ、腸内の善玉菌を増殖させ、悪玉菌を繁殖しにくい環境を整えてくれるそう。たんぱく質、脂質、そしてミネラル成分も豊富で、必須アミノ酸9種のうち、8種を含むというのですからその姿や食感から興味本位に楽しむのみならず、積極的に使いたい食材ともいえそうです。

*食用バジルシードは通販で入手できますからお試しください。