今はむかし… 聖武天皇のお御世(724年〜756
年)には、遣唐使が4回も唐を訪れ、修交を深め
736年にはインドのバラモン僧や唐の僧も来朝
したとの記録が残されております。
この国際交流盛んな時代に丁子(クローブ)、胡
椒、桂皮(シナモン)などが貴重な薬として持ち
込まれ、天皇が崩御されると、お宝として正倉院
におさめられたのでありました。
その後丁子は『薬』としてのみならず、『香料』と
してさらに、『染料』としても使われるようになっ
ていきます…
「水に砕いた丁子と鉄粉や灰も加え、絹布を浸して
煮出す… 」を布が色付くまで繰り返して現れる色
は『丁子茶』と呼ばれ、平安貴族にも人気の色味
だったようで、源氏物語でも
「蜻蛉」「藤裏葉」「宿木」と3回『丁子染めの布』が登場いたしますょ。
中でも第三十三帖「藤裏葉」では、丁子染めの直衣を身につけているのは光源氏の
息子である夕霧!!!
長い間会うことができなかった恋人と再会し、結ばれたばかりの息子に源氏が
・心を狂わせてはいけない
・得意満面になってはいけない
・浮ついた気持ちになってはいけない
な〜んて訓戒する … そんな場面で息子 夕霧が着ていたのが薄茶色の『丁子染め』
の直衣であります。
染めてしばらくは丁子の香りが残りますから、夕霧からもそこはかと…甘い香りが
漂っていたかもしれません…ね〜
僧侶の袈裟としても、紫に次ぐ高位の色として尊ばれ
た『丁子染め』
こちらは現代の丁子染めで作られた香袋です。
品のある素敵な色ですね。