妖精とサンタクロース

           小人の妖精 トムテTomte 

神話の神々とは別に、北欧では生活に寄り添う妖精の存在が信じられてきました。

スウェーデンではTomtarトムテ、フィンランドではTonttuトントゥノルウェー・デンマークではNisseニッセと呼ばれています。

妖精ムーミン一家と仲間たちは、フィンランドの森の中に住み、『ニルスの不思議な旅』はスウェーデンが舞台です。

14歳のニルス・ホルガション少年は日曜日の朝、両親が教会に行って留守の間に家に住み着いている妖精を見つけて虫とり網で捕らえます。約束を破って妖精を怒らせてしまったニルスは魔法をかけられ小人の妖精にしてしまうのですが、動物と話ができるようになったニルスはガチョウのモルテンやガンの群れと一緒にスウェーデン中を旅をしながら成長していくお話です。

TomtarトムテTonttuトントゥNisseニッセ その姿は小さな子供くらいの大きさで、赤いニットの帽子に、半ズボン、木靴をはいて家や納屋、家畜小屋などに住んでいます。

優しい性格で家を守り、家畜の世話を手伝い、家事も助けてくれるのですが、

気難しい一面もあって、大事に扱われなければ干し草をたっぷり抱え、納屋の道具も持って家を出ていってしまう❗️ いたずらをされると怒って人間に殴りかかったり大暴れすることもあるのです‼️。

(中央)庭に住む妖精トムテとミルク粥スウェーデン(右)www.catherineandgraham.ca 

気持ちよく過ごしてもらえば、その家に幸福をもたらしてくれるのですから、大切にしなくてはいけませんね。

そこで昔はユールの日に、現代ではクリスマスイブの夜、妖精に日頃の感謝を込めてお粥『ポリッジ』をお裾分けする習慣があります。ほのかに甘いお粥ポリッジを一皿と、ビールを1杯 馬小屋などに供えて、召し上がれ…

 

               時とともに…

スウェーデンのTomtarトムテ、フィンランドのTonttuトントゥ、ノルウェー・デンマークのNisseニッセ…それぞれ人々に寄り添い大事にされて来た妖精たちは、キリスト教化が進み、商業化されたサンタクロースのイメージが世界的に広がる中で

、その影響を受けつつ変化変身して今に至っています。

           スウェーデン…ユールトムテ

スウェーデンでは、サンタクロースは『ユールトムテ』と呼ばれます。

キリスト教の世界ではサンタクロースのモデルは聖ニコラウスであり、スウェーデンの妖精トムテとの関係性はありません。

キリスト教化が進んでも人々は昔ながらの信仰も持ち続け、トムテを身近に感じながら暮らしてきました。一方キリスト教の世界ではトムテは闇の世界の神々と交信しあう悪魔とみなされる時期が長く続いていました。

20世紀に入るとアメリカの商業主義的なクリスマスの文化の影響を受け、トムテは『ユールトムテ』と呼ばれてスウェーデンにおけるサンタクロースのイメージを与えられるようになっていきます。ソリに乗ってやって来て子供たちにプレゼントをくれる優しいサンタさんのイメージが重ねられました。 

ただし、ユールトムテがアメリカモデルと違うのは、そのソリを引くのはトナカイではなく2頭の黒山羊…その由来はオーディンの息子で農耕と戦いの神とされるトールが操って空を駆けた戦車「チャリオット」を引く2頭の黒山羊のイメージが重ねられたといわれています。

(左)空を駆ける神馬スレイプニルにまたがる戦争と死の神オーディン

(中)2頭の黒山羊の引くチャリオットに乗り戦う農耕と戦いの神トール

(右)豚を従える豊穣の神フレイ

ここでも北欧神話の神とキリスト教が作り上げたクリスマス文化の融合がみられ、我が国の神仏融合にも通ずるような現象が起きています…

チャリオットを引いた黒山羊さん…今では藁で作られ、スウェーデンユールのシンボル『ユールゴート』になっています。

1900年代のポストカード

                            デンマーク・ノルウェー… ユーレニッセ 

デンマークやノルウェーの妖精は『ニッセ』と呼ばれます。こちらもスウェーデンにおける経過同様キリスト教化が進む中でクリスマスにプレゼントをもって現れるサンタさん『ユーレニッセ』へと変わってきました。

ただし、『ユーレニッセ』が乗るソリを引くのは、豚や山羊…神話の英雄 フレイ神のお供をしているさん豚や、トール神のチャリオットを引いた黒山羊さんが活躍するのです。

(左)ノルウェー1900年代 (右)ノルウェー1992年のポストカード

           フィンランド… ヨウルプッキ

フィンランドではサンタクロースを『ヨウルプッキJoulupukki』といいます。直訳すると「クリスマスの山羊」

これは他の北欧諸国同様キリスト教伝来以前に行われていた『ヨウル 』:「冬至の祭り」の習慣を由来としています。

そして「山羊」は他の北欧諸国同様トール神のチャリオットを引く黒山羊がモデル…

 

 

フィンランドのクリスマス『ヨウルの祝祭』では「ヨウルウッコ」と呼ばれる老人が、「 ヨウルプッキ」というヤギに扮した男性と数人連れ立って家々を回る風習がありました。

出典 https://www.patheos.com/blogs/matauryn/2017/11/30/the-yule-goat/

ヨウルプッキは羊の皮をまとい、本物のヤギの角を付けた作り物の頭をかぶって、雄ヤギに扮して子供達に1年間良い子にしていたかを問いただし、悪い子にはお仕置きをする役目でした。秋田のなまはげのように、その出で立ち、振る舞いから子供達には大変に怖がられていたようです。そして一団はお酒を振舞われ、供物をもらって村の家々を練り歩いたのです。

その一団は『ヨウルプッキ』と呼ばれ、いつしかヨウルの祝祭も『ヨウルプッキ』と呼ばれるようになっていました。

100年ほど前になると、ヨウルプッキの振る舞いはソフトになり、子供達にお行儀をよくするよう教え、プレゼントを配ってくれる優しいおじいさんに変わっていきました。

1931年コカ・コーラ社が赤いサンタの広告を打つとそのイメージは世界中に広がります。

北欧でアメリカイメージのサンタクロースが定着するのは 1980年以降のこと…ヨウルプッキは赤い服ととんがり帽子をまとうように変わっていきました。

現代のヨウルピッキは「良い子はいるかい?」:Onko taalla kiltteja lapsia?…といいながら、一軒一軒ドアをノックして訪れ、子供達はヨウルプッキの膝の上に座ってクリスマスソングを歌います。子供達はヨウルプッキのプレゼントを心待ちにしていて、配るのを手伝うこともあるようです。