クミン Cumin 馬芹(うまぜり)
カレーの香りはクミンから…
日本人にとってのクミンはなんといっても「カレーの香りのスパイス」ですね。江戸時代「馬芹:うまぜり」と呼ばれて小石川の薬草園で栽培されていた…とする記録があるものの、民衆の食卓と関わるに至らないまま、明治のなってイギリス経由でカレーが紹介されると、その香りは一躍日本人を虜にしてしまいます。以来カレー熱は高まるばかり… 日本に限らず、世界中の人々を魅了してきたクミンの魅力を紐解きましょう。
クミンの原産地は地中海沿岸東部といわれ、中東からインドにかけて、そして北アフリカでも自生する姿が見られるセリ科の1年草です。
地中海沿岸から世界へ…
古代エジプトではクローブ、アニスなどと共にミイラの防腐剤として使われ、商人達がメソポタミア地方へ運ぶと次第に広まって、栽培されるようになりました。さらに古代インドに伝わると、カレーやチャツネに欠かせない食材になっていきます…。
ローマ・ギリシャでは薬用や化粧用として、また お茶としても飲まれ、「食卓にクミンの種子を常備し料理の風味付けに使用した。」との記録が残ります。
中世ヨーロッパでは、多くのスパイスが遠くアジアから運ばれ、希少で高価なのに対し、クミンは 地中海沿岸や南ヨーロッパエリアで栽培できたため、入手しやすいスパイスとして多用されました。そして料理の風味づけや防腐、抗菌目的で使われるのみならず、『幸せを連想させるスパイス』として今日の“ライスシャワー”のように新婚カップルに浴びせたり、恋人の心変わりを防ぐ特効薬として戦上に行く若者のポケットに忍ばせるサシェに仕立てられられたりと、『愛のスパイス』としても活躍したのです。
16世紀になると、コロンブスの新大陸発見によってメキシコ アメリカに伝わり、インド、メキシコ、東南アジア、アフリカなど各地のエスニック料理になくてはならないスパイスとしてワールドワイドに活躍するに至っています…。
カレーの香り:ホルムアルデヒドの健康効果
暑く乾燥した気候を好まないため、インドからヨーロッパにかけての広い地域で冬の作物として栽培され、世界最大の栽培量を誇り、最大の消費国でもあるインドでは「ジーラ」とよばれて、調理を始めるにあたり、油に入れて炒め、香りを移すスタータースパイスとして欠かせません。
独特の強い芳香とかすかな辛み・苦みのある個性的な香り:まさしくカレーの香りを決定づけるのはクミンに含まれる精油成分:クミンアルデヒドで、炒めると皮がはじけてお馴染みカレーの香りが立ちのぼります。
アーユルヴェーダでは胃病、吐き気の治療や健胃、消化促進・解毒・駆風(胃腸にたまったガスを排出する)に貢献し、抗菌殺菌作用から口内炎にも効くとして使われてきた歴史があり、高い抗酸化作用も嬉しいところ。やさしく体内の熱を排出してくれる効果からインドの家庭ではお茶にして飲まれています。これが香ばしく美味しいの! レシピをページ後尾に掲載しますので、ご参考に…
食材としては、ホール(種の粒)のまま 又は 粉末にして使われますが、ヨーロッパではホールのままチーズや飲みのも、お酒、マリネやピクルス用液に加えたり、北欧やドイツではクミン入りのチーズも製造されて人気です。
(左)クミンシード入り『ゴーダークミン』チーズ
(中央)胡椒やクローブなどと一緒にピクルス液に入れると、程よくピリリ!その効果は絶大です。
(右)粉末にして他のスパイスとブレンドされる「ミックススパイス」にも多用されます。カレーパウダーやメキシコのチリーパウダーなどはお馴染みですね。「チリコンカン」の風味付けにはチリパウダーが欠かせません。
クミンが活躍するレシピたち
鶏肉のレモンソテークミン風味とクスクスプレート
クミンの風味とレモンが絶妙に爽やかなソテーです。フライパンに残った美味しいソースをクスクスに吸わせて添えれば、あっという間にエスニックな一皿が出来上がり!モロッコではタジンのお供に欠かせないモロッカンサラダとの相性が絶妙です。ぜひ合わせて作ってみてください
《材料》 2人分
鶏もも肉 2枚
クミンパウダー 小2
レモン 1/2個
はちみつ 大1
粗製塩 小1/2
黒こしょう 少々
オリーブオイル 大2
鶏肉は筋や脂を取り除き、クッキングペーパーをあてて余分な水分を取っておきます。
レモンは薄切りにしておきます。
《作り方》
① 鶏肉にクミンパウダーを振り、レモン・はちみつ・塩・黒こしょう・オリーブオイルも加えて揉み込み、しばらくおいて味を馴染ませます。
② フライパンにオリーブオイルを敷き、皮目を下にして入れます。初め中火で表面を焼き付けたら弱火にしてフライ返しで押さえながらじっくりと焼き…こうすることで、皮がパリ!と香ばしく焼きあがります。返してもう片側も焼きましょう。
③器に移し、フライパンで軽くローストしたクミンシード(分量外)をふると芳ばしい香りがプラスされてお奨めです。パセリもふるとプレートに元気がでます!
*フライパンに残った煮汁を再加熱し、クスクスを適量加えたら蓋をして火を止め、しばらく蒸らしましょう。こんがり焼けたチキンソテーに美味しい焼き汁をたっぷり吸ったクスクスを添えたら、素敵なワンプレートの完成です。
モロッカンサラダ
《材料》 4人分
トマト 大1個
きゅうり 1本
赤玉ねぎ 小1/2個
コリアンダー(フレッシュ) 大1
クミンパウダー 小1/2
レモン果汁 大1
オリーブオイル 大2
黒こしょう 適量
粗製塩 適量
*トマト、きゅうり、赤玉ねぎは1cmの角切りに コリアンダーはみじん切りにします。
《作り方》
① ボウルにオリーブオイル・クミンパウダー・黒こしょう・粗塩・レモン果汁を入れて混ぜ、ドレッシングを作ります。
② ①のボウルに野菜を加え、①のドレッシングと和えます。
③ 冷蔵庫でよ~く冷やして、味がなじんだら完成です♪
*オリーブの実やアボガドを加え、パプリカをふるとさらに豪華に…
クミンティー2種 … インドの家庭に昔から伝わる健康飲料
クミンはインドでは「ジーラjeera」と呼ばれ、料理には欠かせないスパイスです。さらに現地で暮らす友人が「毎朝クミンティーを少し温めて飲むと… 消化を整え、デトックス効果も期待できる。」と教えてくれました。それは香ばしく、ほのかにカレー風味のほうじ茶といった感じ… 友人は水出しにしていましたが、煮出して作るクミンティーも日常よく飲まれ、温かくても冷やしても美味しく飲めて日本でいう麦茶やほうじ茶感覚 あなたもお試しになってみませんか?
ディリー クミンティー … 日々の健康飲料として
《材料》2人分
クミンシード 小2
水 360ml
《作り方》
① 鍋にクミンシードを入れて火にかけ、中火にして鍋をゆすりながらクミンをから炒りします。
② クミンが色付き始めて煙が出始めたら水を加え、沸いたら1分ほど煮だしましょう。
③ 飲みやすい温度になるまで冷ましてから茶こしで濾してつぎ分けて、さあ「どうぞ…」
クミンシードの色比べ
左:いつものシード
中央:軽くロースト済み…ディリークミンティーに
右:ビターロースト済…ローストクミンティーに使います。
ローストクミンティー …お腹をこわした時のスペシャルドリンク
《材料》2人分
クミンシード 小2
水 360ml
黒砂糖(粗製糖) 適量 … お砂糖を加えると薬効成分の身体への吸収がよくなるそうです…
《作り方》
① クミンシードを煙が出て黒っぽくなるまで炒ります
② すぐそばに水を用意しておき、よい色になったら直ぐ注ぎ入れます!
*タイミングを逃すと炭のようになって焦げて香りも飛んでしまいますから、ここは集中!注意しながら作業を進めてください。