アメリカに渡ったジンジャーブレッド
17世紀 ヨーロッパの人々がアメリカに入植すると、レープクーヘンやジンジャーブレッド も持ち込まれました。
アメリカではサトウキビから砂糖を生成する際にできる糖蜜シロップが安く手に入りましたから、ジンジャー ブレッドの風味付けにも糖蜜が使われ、その色を反映して、生地は濃いブラウンで、しっとりと独特の風味を身につけたアメリカンジンジャーブレッド が生まれていきました。
形状はパウンドケーキ型のものあり、クッキーあり…
クッキーの形状には丸形とジンジャーマンが存在して、丸形クッキーはぽってりと厚みがあって、中にクリームやキャラメルが入っているものもありますね。
生地を厚くして焼くので表面はひび割れのようになるのが特徴的
『ジンジャーマンクッキー』は手足が短く、3頭身ほどのふっくらしたジンジャーマン=クッキー坊や形が主流です。
ジンジャーブレッドが生まれたのは16世紀のイギリスで、時の国王ヘンリー8世が健康増進や伝染病対策のため生姜の摂取を勧めるおふれをだしたことに始まるといわれています。その娘であるエリザベル1世は人の形をしたジンジャーマンブレッドを作らせ、自身の恋のお相手や、政治外交上の要人へのプレゼントに使ったと伝わり、
それは外交交渉の成否に関わり?、女王の恋の行方を左右する?重要アイテムでもありました!
人の形をしたジンジャーブレッド マンがデビューしたのは、16世紀のイギリスで…
エリザベス1世のお気に入りでした。
それは外交交渉の成否に関わり?、女王の恋の行方を見定める?重要アイテムでもありました!
当時は大変精緻でリアルな、ある意味大人フォルムのジンジャーブレッドが人気でしたが、 その傾向は引き継がれ、1902年にフランスで描かれたパンデピス:ジンジャーブレッド 売りの屋台に吊り下げられたジンジャーブレッド マンもリアルなフォルムをしています。

そのきっかけになったのが、1875年に発行された子供向けの雑誌『St.Nicholas Magazine セント・ニコラス』に掲載された民話『The Gingerbread Boy』の主人公「ジンジャーブレッド マン」でした。
子供のいない老夫婦がジンジャーブレッド マンを焼いていると、ジンジャーブレッドマンがオーブンから 飛び出して、逃げ出してしまいます。
追いかける老夫婦を振り切り、豚も、牛も、馬も、農夫も振り切って、どんどん走るも…川に出くわし、立ち往生…そこにやってきたきつねに食べられてしまいましたとさ・・・といったお話
古くからヨーロッパ各地にパンやソーセージなどの主人公が、「食べられてしまうのはご免だょ~」と、逃げたり、転がったり…といった展開の民話が語り継がれていましたが、移民の国アメリカでは、主人公がジンジャーブレッド になって、『The Gingerbread Boy』が発表されたのです。
お話は注目を集め、その後多くの挿絵画家が独自のジンジャー坊やが走る絵本を発表しています。
それぞれキュートですが、どの子も手足が短く、3頭身ほどのふっくらした体型はほぼ共通…
こうしてアメリカのアイドルキャラクターになったジンジャー坊やが日本にも伝わり、私たちにとって『ジンジャーマンクッキー』といえば、手足の短い3頭身のふっくら坊やのイメージが定着したのです。
そこでぶつかるのが、「ジンジャーマンクッキーは、ペストや風邪から国民を守るために、生姜の摂取を推奨したヘンリー8世がモデルになっている」という説
確かに「生姜をたっぷり摂取するように…」とおふれを出したのはヘンリー8世でした。国民たちもそのエピソードを忘れず語り継いでおりました。
しかし、ジンジャー坊やがアメリカで生まれた当時、イギリスやフランスで作られていたジンジャーブレッド はリアルな人間フォルムの仕上げだったのです。…ここからは、私個人の推測ですが、イギリスに逆輸入されたジンジャー坊やを迎えたイギリス人達は、「ジンジャークッキーの故郷はイギリスにあり!」のプライドも手伝って、『The Gingerbread Boy』のお話はさておき、「ジンジャーマンクッキーはヘンリー8世を偲んで作られたのである」と主張したのでは…!? 以上私の私見でした…
何はともあれ、『The Gingerbread Boy』のお話は小学校でも教材に取り上げられて、アメリカで知らない人はいないお馴染みのお話になっています。

『The Gingerbread Boy』は日本でも紹介されています。
『しょうがパンぼうや』
作・絵 ポール・ガルトン
訳 ただひろみ
ぽるぷ出版

『おだんごぱん』
訳 瀬田 貞二
絵 脇田 和
福音館書店
*ロシア民話として紹介されていますが、内容や展開
がよく似ています。
おばあさんの作ったおだんごぱんが逃げ出して…うさぎからも、オオカミからも、熊からも上手に逃げたのに、
口のうまい狐には…

『ジョニーのかたやきパン』
作 ソーヤ・ルース
絵 マックエオスキー・スケート
*アメリカで出版された本の和訳
作者はアイルランド人の乳母からたくさんの民話を聞いて育ち、このお話はその時の記憶がもとになっているといわれています。
こちらは「かたやきパン」が転がる 転がる …
☆ 映画『シュレック』ではジンジャーマンの「Ginry ジンジー」が登場しています。
またミシュル・ルグラン作曲、メラニーマルティネスの歌う「GingerBreade Man」もご興味ありましたら… 可愛らしいメロディーと歌唱ですが、歌詞はなかなか過激です…