Assam tea     インド アッサム州の街「ガウハティ」の紅茶ショップ↓

19世紀初頭 イギリスでは労働者階級にも喫茶の習慣が浸透し、中国で仕入れる茶葉の量では国内消費に十分応えられなくなり、総力をあげて独自の生産地開発をめざしていました。

そんな中1823年インドで侵攻を進めていた東インド会社の軍人ブルース兄弟がビルマ(現ミャンマー)との国境に近いアッサムの原野で野生化した茶樹を発見したことは、大きな契機になりました。ブルースはその種や苗を手に入れてアッサムの自宅の庭に植樹し、栽培を試みます。10年余りの試行錯誤の末 茶の木はみごとに成長し、1837年 自ら栽培した茶の葉を製茶してロンドンに送ると翌年オークションに上場され好評を得たのです。(弟)チャールズ・アレキサンダー・ブルース→

こうしてアッサムの原野で野生化していた茶樹は正式に茶の木『アッサム種』として認められ、野生の象やサイが住むジャングルは開墾され、アッサム茶樹が植えられて広大な茶畑が開かれます。その後アッサムティーは味・香りの良さ、カップの水色の濃さや鮮明さなどの品質がミルクと砂糖を加えて淹れるイングリッシュティーに最もふさわしいとして、本国イギリスでの圧倒的な支持を得て、世界最大の生産量を誇るインド産紅茶の半分を生産する大産地に成長しています。

インド北東部のアッサムは北にはヒマラヤ山脈がそびえ、その中央を大河 ブラマプトラ川が東から西へと横断するように流れる標高50~500mの平坦な大平原で、その面積は北海道とほぼ同じ …どこまでも平坦な草原や農地が続きます。アッサムの

ほぼ中央に位置するジョハットに向かう途中 車を降りて一時休憩したガジランガ国立公園は森林や湿地帯が広がり、インド象や虎には遭遇できなかったものの、遠く一角サイの姿を見た時は大興奮して冷静ではいられなかったほど… (左)モンスーンの時期には水没するという湿地帯がひろがります。(右)ジュートの栽培風景↓

熱帯性の広葉樹林が広がり、ブラマプトラ川を含む4本の河川が交錯するガジランガ国立公園 世界遺産にも登録されている公園で魚釣りをする男性2人…獲物1尾を手に引き上げて行きました(笑)。

ブラマプトラ川流域にでると、その水面は地平の果てまで続き、たっぷりと水をたたえて流れがなく、広大な湖にしか見えません。 モンスーンの季節になると毎年降雨により水位が9〜12mも上昇し、河が氾濫して見渡す限り水没してしまう。それでもその洪水を養分いっぱいの土を運んでくれる毎年の自然現象として受け入れ、水が引いてから農地の区画割をし直しては稲作を続けてきたという現地の農耕スタイルにスケールの違う自然の中で暮らす人たちのおおらかさ?と順応性?を感じたのでした。

12月~2月の寒期と、モンスーンによる雨季にあたる8~10月はそのエネルギーが弱まるものの、アッサムを照り付ける太陽はブラマプトラ川からたっぷり水分を吸い上げ、空高く持ち上げられた蒸気はヒマラヤから吹いてくる風に冷やされて、霧になったり、雨になったりして大地に降り注ぎます。さらに太陽は蒸れた茶葉が冷えてしおれないように温度と光を注ぎ、また乾燥させて茶の葉1枚1枚を育てます。こうしてアッサムでは降り注ぐ陽光が美味しい紅茶を作るのです。

朝の茶畑…清々しい朝の空気と、すでにまぶしい陽光が緑のプリズムを映す中 茶摘みさんたちが集まります。

カゴがいっぱいになると計量所へ…

アッサムを原産とするアッサム種の茶葉は、中国種の茶葉に比べてタンニンを多く含むのが特徴で、タンニンはアッサム紅茶特有の力強く濃厚な風味や深みのある濃い水色の紅茶を作り出します。 そのタンニンは日照時間が増えるほど大量に生成されますから、陽光をたっぷり浴びて育つ6月頃に摘まれるセカンドフラッシュ:夏摘みが、味・香り・コクのバランスがとれた最高品質の茶 クオリティーシーズンといわれます。

このように亜熱帯性で世界有数の多雨地帯でもある気候が茶樹の栽培に適していることから、アッサムはインドの紅茶生産量の1/2を占める大産地となっています。

アッサムの製茶は『オーソドックス製法』と『CTC製法』の2種類が行われています。

オーソドックス製法

茶葉の形状を残して製茶される19世紀から続く伝統的な製茶法です。

)萎凋:Withering…茶葉をしおれさせます。

紅茶の製造過程は、摘み取った葉を揉んで発酵を促し、乾燥させて仕上げますが、摘み取ったばかりの葉は硬くて張りがあるため揉めません。そこで下を温風が通る「すのこ」の上に20時間ほど置いてしおらせます。

ジョハットの製茶工場内 送風機が並び、その先に伸びるスノコの下部に風を送ります。↑↓

2) 揉捻じゅうねん:Rolling…揉む作業で茶葉に傷をつけます。

「ローリングマシーン」にかけて、葉に傷をつけます。萎凋されしおれた茶葉は中央の円柱タンクに入れられ、石臼のような構造の両面の間で手のひらに茶葉を乗せ、両手でこするように揉みあげられます。この過程だけで乾燥して仕上げれば葉の形状が残った茶葉になります。

3)「ロータバン」は金属の筒の中に、ローラー式の歯が入っていて、茶葉をねじり切るため、茶葉は細かくよじれ、引きちぎられたようになり、こうしてできたものは『セミオーソドックス製法』と呼ばれます。

ロータバン を終えた茶葉は葉汁とともに、塊になっているため、上下に動く斜めの滑り台のような金網の上に乗せてふるい分け分散させ、集めます。

4)発酵

タイル貼りの床に4〜5cmほどに積み上げ、室温25℃湿度80〜90%の状態を保ち、20分から3時間ほどおいて酸化発酵させます。

5)乾燥

発酵工程が終わった茶葉は、乾燥機へ。箱型の乾燥機の中をベルトコンベアーが茶葉をゆっくりと移動させます。100℃近い熱風をあびると酸化酵素は働かなくなり、発酵が止まり、その後水分量3% 程度まで乾燥されます。

『ソーティングマシン』は穴の大きなメッシュが上で、だんだん穴が小さくなるふるい」が重なった構造をしており、これを全体に揺すってサイズ別に分けていきます。

19世紀から作られている茶葉の形状を残して製茶される伝統的なオーソドックスタイプは主に海外への輸出品として生産され、特に夏摘みの上級品に茶葉のエキスで黄金色に染まった芯芽=ゴールデンチップスをたっぷり含むタイプは世界の紅茶ファンが愛好する逸品です。*先端の茶葉「芯芽」は丸まってうぶ毛がいっぱい…そのうぶ毛が発酵の過程で茶色になっていく茶葉のエキスに染まって、金色に輝いて見えることから「ゴールデン」:「金色の」「チップス」:「芯芽」です。

CTC製法

大型で肉厚な葉に紅茶エキスをたっぷり含むアッサムの茶葉の特徴を最大限活かすために考案された製茶法がCTC製法です。CTC処理の主役はギザギザの歯が付いた2本のシリンダーで、萎凋を終えた茶葉がこの回転速度が異なる2本のシリンダーの間に落されると、間に挟まった茶葉は「Crush:引き裂き → Tear:押しつぶし → Curl:丸められる」茶葉は繊維状まで崩され、丸まって顆粒状の茶葉となります。

小さな球状に製茶された茶葉はエキスが抽出されやすく、短時間の抽出でもしっかりとコクと甘みが出るため世界中で指示されて、現在アッサムで生産される紅茶の90%以上がCTC製法で仕上げられています。1930年代にアッサムで考案されたCTC製法ですが、その後スリランカやアフリカ等の産地でも取り入れられて、今や世界で生産される紅茶の90%以上はCTC製法…ティーパックを開けてみると、コロコロしたCTC紅茶が入っていますょ。

自然な甘みと力強いコクをもつアッサム茶はミルクティーで楽しまれるのもお勧めです。

茶摘みさんの集落訪問

以下は茶畑や製茶工場に隣接する茶摘みさんたちの集落を訪問させていただく幸運を得た時の映像です。10月とはいえ陽射しは力強く、バナナやパパイヤがたわわに実り、土壁作りの簡素な住宅の庭には大木が大きな陰を作っていました。

総勢15人以上での訪問でしかたが、主長の住まいの屋上でお茶を振舞っていただきました。CTCの茶葉を鍋で煮出し、砂糖もたっぷり入れて、茶こしで濾して出来上がり…

集落でただ1軒の雑貨屋さん… 小袋入りの駄菓子が目立ちました。

手を合わせてにこやかに「ナマステ」…穏やかな笑顔と白い歯が印象的

海外からの訪問者をこんなに大勢でバスまで見送ってくれました。

インド各地に足を運んだ私ですが、アッサム訪問は2011年10月紅茶研究家磯淵武先生のツアーに同行させていただき、実現したものです。

日本の紅茶界のパイオニアで第一人者であられた磯淵先生だからこそのプランで、得難いお話もたくさん聞かせていただいた充実旅のほんの一部をご紹介してみました。

アッサムの空気感が伝わりますように…