トウガラシ 唐辛子 チリペッパー Chili Pepper  🌶

唐辛子といえば和柄の定番であり、昔から日本人の暮らしに浸透していたイメージのある香辛野菜ですが、その故郷は遠く南アメリカの熱帯地域!ペルーではインカの時代以前から マヤ・インディオも2000年以上前から栽培していたものを、1493年 コロンブスがヨーロッパに持ち帰り、その種が世界各地に広がって、わずか100年の間に辛さ、色(赤・白・黄・緑・紫・黒・橙・茶)、形、大きさ(.cm~25cm)・風味の違う様々な品種が生まれたというのですから、まさに、小粒ながら変幻自在 ワールドワイドなペッパー君であります。

日本への渡来については諸説あり、そのうちの1つによりますと、1543年 ポルトガル船が鉄砲とともに種子島に持ち込み、宣教師によって伝えられた。その後上陸した九州地方で2つの呼び名をもらって広まります。

その1つは『唐辛子』=「唐」は外国または南蛮渡来という意味で用いられ、外国から来た辛い香辛料「辛子」と合成されて『唐辛子』

そしてもう1つは『南蛮胡椒』=「南蛮」はポルトガルを表し、ポルトガル人が伝えた「刺激のある辛いもの:胡椒」と合成されて『南蛮胡椒』

唐辛子は運ばれた地での順応性が極めて高く、日本各地で栽培されるうちに土地に合わせた特性を身につけ、鷹の爪、伏見甘長唐辛子、満願寺…などなど 各地でご当地唐辛子が生まれています。

天和年間(1681~1684)に東海地方で書かれた『百姓伝記』には、「赤く細く実なるうちに大小あり また短く赤きになりの色々かわりたるものあり 赤きうちにとつと大きなるものあり また黄色なるうちに大小あり 下へさがりてなるものあり 空へ向きてなるものあり」との記載がみられ、赤いもの、黄色のもの、細いもの、短いもの、大きさも大小あり、下を向いて成るものもあれば、空を向いて成るものもある…とバラエティー豊かに変身を遂げた唐辛子が紹介されています。元禄文化華やかかりし頃、唐辛子も日本各地で辛味も形も色も様々に個性を発揮していったようですね。

鷹の爪

伝来当初は辛い品種ばかりで、その代表格『鷹ノ爪』は、辛味が最も強く、横に広がった枝に長さ5~7cm、幅約1cmほどの小ぶり小さな果実が上を向いて次々になります。

八房 やつぶさ

房なりに実がたくさん付くことからその名がついた『八房:やつぶさ』は主に関東地方で栽培され、ほどよい辛さが特徴 葉の上に顔を出して一斉に実り、収穫しやすいため、七味唐辛子などの加工用に大量栽培されました。葉は葉唐辛子として使われます。

日光

『日光』は栃木県日光周辺で古くから栽培されてきた品種で、10〜15cmの痩身にやわらかな辛味が特徴 ウリをくりぬいた中に詰める鉄砲漬の材料として長い歴史があります。

伏見甘唐辛子

京都の「伏見」系の辛い唐辛子の中から、現在京野菜の代表格になっている『伏見甘長唐辛子』が生まれ、『獅子唐』なども誕生しますが、これらの甘唐がいつ、どのようにして生まれたのか、はっきりしたことはわかっていないようです。

ぼたん胡椒

長野県北部の特産で肉厚な果実の先端周辺に深い溝があり、複雑な形状が牡丹の花のように見えることが名前の由来です。冷涼な気候を好み、標高800m以上の地域でないと辛くならず、大きくもなりません。 唐辛子の辛さ甘みを持ち合わせている個性派です。

あまりの激辛ぶりに「毒」と言われた! 食用としては受け入れられず、足袋の中に入れてしもやけ予防に使われた!などのエピソードが残るものの、江戸時代初期には「香辛野菜」として、漬け物、魚の保存食、炒め物、煮物などのお供として使われるようになっています。

『七味唐辛子』の誕生…

さらに1626年(寛永2年) 江戸薬研堀端(現中央区東日本橋)で薬種商を営んでいた 中島徳右衛門が、唐辛子、焼唐辛子、芥子の実、麻の実、粉山椒、黒胡麻、陳皮の7種類の薬味を混ぜ合わせた『七味:なないろ』を考案して売り出します。日本独自のミックススパイス『七味唐辛子』の誕生です。

江戸城内の菊の宴に際し、時の将軍徳川家光に献上すると、将軍様も『七味』をたいそう気に入られ、徳右衛門の店は「徳」の字を賜り「山徳」の紋を掲げるご褒美までいただいたのでした。さらに市中では江戸っ子に人気の蕎麦に合う!とたちまち広まって… 以後京都の「七味屋本舗」、信州の「八幡屋礒五郎」など各地でご当地七味が誕生していきます。

世界に広がる子孫たち

すでにお話しましたように、唐辛子の故郷は南アメリカ…

南米ペルーではインカ文明発祥のず~っと以前 紀元前7000年~8000年頃から、メキシコのマヤインディオも2000年以上前から栽培していたと考えられているそう…

そんな唐辛子が海を渡るきっかけになったのが コロンブスの渡来でした。

コロンブスはインドの胡椒を求めて大西洋を超え、太平洋も超えてアジアにたどり着こうと航海に出たのですが、その進航に立ちはだかったのが南北のアメリカ大陸でした。

そうとは知らずインドに着いた!と確信していたコロンブス 

 アメリカ大陸の先住民を「インド人」:「インディアン」と呼び、カリブ海の島々は「西インド諸島」 そこで見つけた辛くて赤い実を「きっと胡椒の一種に違いない!」とヨーロッパに持ち帰って「赤い胡椒」=『レッドペッパー』と紹介したのが名前の由来となっています。

1493年コロンブスが種をヨーロッパに持ち帰り、それが熱帯~温帯まで世界各地に広がって…各地の気候や地理的な条件に順応し、わずか100年の間に辛さ、色(赤・白・黄・緑・紫・黒・橙・茶)、形、大きさ(.cm~25cm)・風味の違う様々な品種が生まれ、その種類は3000種近くに…

こうして広まるうちに、各産地で地名や形などを表す名前が付けられてきたため、唐辛子の呼び名は数多く混雑し、わかりにくくなっているのです。

そこで… お馴染みの呼称の整理をしてみましたので、以下ご参照ください。

『チリパウダー』…メキシコ風料理に使うミックススパイス

アメリカのスパイス商人が、メキシコ風料理を手軽に作れるようにと、唐辛子を主体に、クミン、オレガノ、ガーリック、パプリカなど何種類かのスパイスやハーブをブレンドして作り出したミックススパイスです。メキシコから北アメリカにかけてのメキシコ風料理、特にチリコンカンやタコスを作る時には欠かせません。メキシコを長く統治したスペイン料理などにもよく使われます。

『チリペッパー』…唐辛子の英語名

「チリ」はメキシコ先住民の「舌を刺すような辛さ」という意味の言葉 

 スペイン人がそれを聞き、トウガラシを「チレ」と呼び、英語では「チリペッパー」と呼ぶようになりました。

『レッドペッパー』…唐辛子の英語名

コロンブスによる命名以来トウガラシの呼称で、チリペッパー同様トウガラシの英名です。

『カイエンペッパー』 エチオピア産のトウガラシの一品種

日本では、イタリアで修行したシェフ達が唐辛子のことを「カイエン」と呼ぶことからお馴染みの呼び名になった感のある呼称です。

韓国産唐辛子』

辛味が少なく甘みとコクのある独特の風味が特徴 食欲をそそる赤色でキムチ、サラダ、チゲなどの鍋物に広く使われて、韓国料理に欠かせない香辛調味料になっています。

その唐辛子 1592年 秀吉の第1次朝鮮出兵の日本人兵士たちによって朝鮮半島に持ち込まれ、現地での煮炊きの調味料として使うほか、燃やしてその煙を目つぶしに使う兵器としても使われたとか。当時は大真面目 今となっては少々笑みもこぼれてしまうようなデビュー風景ではありますが、これにより韓国に唐辛子が伝わって、広まっていった…とされています。

唐辛子の韓国伝来で最も変わったのが、古来親しまれていた発酵食品『韓国キムチ』でしょう。従来山椒を使ってピリリ!を効かせていたキムチに唐辛子が加えられ…次第に置きかわって…今ではキムチといえば唐辛子! は、日本でも周知のところですね…。

お話を戦国時代に戻しましょう。秀吉は文禄の役に続き、1597年第2次朝鮮出兵の命を下します。この慶長の役に参戦した日本人兵士たち…今度は朝鮮で調味料として広まっていた唐辛子を持ち帰ることになるのですが、それは朝鮮:高麗から持帰られたことから=「高麗胡椒」の名をもらい、沖縄では唐辛子やそれを利用した調味料が『コーレーグース』と呼ばれるようになります。

その後、東日本では「南蛮胡椒」の「胡椒」が省略されて「南蛮」と呼ばれるようになり、「南蛮味噌」といえば唐辛子味噌のこと。また仙台で牛タンに添えられる「南蛮」といえば、青唐辛子の味噌漬けをさしています。

一方 九州などでは「高麗胡椒」の「高麗」を取って「胡椒」と呼ばれるようになったり、「唐辛子」は「唐を枯らす」とも読めるため、中国と交易のあった九州では縁起の悪い言葉とされ、「胡椒」と呼んだりと、各地の食卓に浸透し親しまれたぶん呼び名も多彩になったようです。

『ハバネロペッパー』

特に辛い唐辛子としてその名が知られています。刺激が強い唐辛子なので、使う量はもちろん、使った手で目や顔に触れたりしないよう気を付けましょう。普通の唐辛子では物足りない、そんな激辛好きにはたまらない辛さに仕上がるはずです。 

 

ハラペーニョペッパー』

メキシコ料理で活躍する青唐辛子です。

ハバネロペッパーと混同されやすいですが、激辛というほどではありません。とは言え、辛みはしっかりつきますから、味をみながら加えていくとよさそう。サルサソースやタコスなどに使われメキシコ料理に欠かせません。

『プリッキーヌ』

タイで栽培されている長さが2~3cmと、世界最小のトウガラシ果実です。プリッキーヌ この愛らしい響きの名称は、タイの言葉で「prik kee noo(ネズミの糞のような)」に由来するのだそう(笑)。その艶やかで小さく、可愛らしい容姿とは裏腹に、辛味は強烈 あとから甘味を感じるのが特徴です。トムヤムクンやグリーンカレーに使われいぇ、タイ料理には欠かせない存在です 

世界中の料理になくてはならない存在になった唐辛子はまさに、「世界を駆け巡るスーパーヒーロー」🌎🌶🌶🌶