シナモン cinnamon、 肉桂・桂皮

シナモンはアップルパイやシナモンロールなど、スィーツにも欠かせないお馴染みのスパイスです。

身近なスパイスですが、近縁種『セイロンシナモン』『カシア、シナニッケイ』『ニッキ』の3種が混同されて流通していることが多いのが現状です。

3種3様の個性を知ることで、上手なおつき合いの第一歩…? になりますように

セイロンシナモン

その原産地はスリランカおよび南インドです。 スリランカでは山中にシナモンが自生し、お花の時期になると、山櫻ならぬ山シナモン… 緑の中に点在するシナモンの木が白く浮かんで、近づくとお馴染みの香りが漂い、近隣住民さんたちが樹皮を剥ぎ取った跡が残っていたり…、またコロンボにあるその名を冠した五つ星ホテル「シナモン・グランド・ホテルCinnamon Grand Hotel」はロケーションと眺めが素晴らしく、また違うシナモンワールドを楽しめます。

甘く優しい上品な香りは古くからヨーロッパ人の憧れの的で、大変高価な時代が長く続きましたが、今ではセイシェル諸島、ベトナム、インドネシア のスマトラ島やインドでも栽培され、気軽にたっぷり使えるようになりました。正真正銘の正統派

シナニッケイ カシア

世界中で人気のスパイス「シナモン」ですが、「シナモン」の名称で流通しているものの中にはセイロンシナモンに加え、近縁種「カシア」があります。別名「シナニッケイ」と呼ばれ、こちらは、中国、タイ、ベトナムなど、東アジア・東南アジアに自生していたもの。セイロンシナモンに比べ色みが赤く、樹皮が肉厚です。 濃厚で野性的な甘い香りとスパイシーな後味が特徴 

その樹皮は漢方で最も重要な生薬の一つであり 生薬名「桂皮(けいひ)」または「肉桂(にっけい)」と呼ばれ、身近なところでは『大正漢方胃腸薬』の主要成分として健胃・消化液分泌促進に力を発揮しています。

ニッキ

そしてもう1つの近縁種が和菓子でお馴染みの「ニッキ」

日本には8世紀  聖武天皇の時代に漢方薬として渡来し、正倉院の宝物リストにも「桂心」という名前で記載があるそうです。

樹木としては、徳之島や沖縄本島で野生種が見つかったことから、ハレて日本も原産地として認められているのですが、栽培が始まったのは、江戸時代享保年間にシナニッケイの樹木が伝わり、次第に「日本肉桂」や「日桂:ニッキ」と呼ばれるようになったようです。生育地域が広まると、粉末にされて、主に和菓子の香り付けに使われるようになっていったのですが、なんと使われたのは樹皮ではなく根っこの部分

日本産のニッケイの『根』の樹皮をはがすと、セイロンニッケイと同じように、内側にコルクのような層があります。それを乾燥させて使うのがニッキ粉です。

ご先祖さまはよくぞ根っこの香りに着目されたもの!と思いきや、雑木林に自生するニッキの木から少し離れた場所に顔を出しているその根が香り高く、子供の頃それを掘り出して口に含んだ思い出をもつ人が結構いらっしゃる… 残念ながら私にはその経験はありません。もしかすると長野の気候は暖地出身のニッキには冷涼すぎて、私が駆け回っていた里山や鎮守の林には自生していなかったのかもしれません。小田原、茅ヶ崎で幼少期を過ごされた方達からニッキ体験のお話をうかがいましたから、関東が北限でしょうか?

シナモンスティックに注目

日本で流通しているシナモンスティックに使われるのは、セイロンシナモンとシナニッケイ 双方とも外樹皮と呼ばれる一番外側の皮が使われますが「シナモンスティック」は、 若枝から樹皮をはいでそぎ取り、一昼夜放置して発酵させた後 外皮の外側であるコルク層を削り取ります。 

この外樹皮の内側にさらに樹皮を重ねて丸めたものを乾燥させて作られるため大変手間がかかっており、それだけ高価になる傾向があります。

 左:カシア、右:セイロンシナモン 巻きの違いがわかります。

樹皮が肉厚であるシナニッケイのスティックは外樹皮をそのまま細く丸めて乾燥させるため、手間がかかりません。そのため低コストに抑えられ、一般に低価格で流通しているシナモンはシナニッケイが使われていることが多いようです。

共通成分と独自成分

3近縁種に共通するシナモンの香りの原因物質は「シナムアルデヒド」と呼ばれる淡黄色の粘性のある精油成分で、シナモンなどのニッケイ属樹木の樹皮から共通して得られます。

それに対し、セイロンシナモンの独特な風味の元である成分「オイゲノール」は、セイロン産のシナモンのみに含まれる成分で、シナニッケイやニッキには含まれていません。セイロンシナモンの香りがマイルドで上品…とヨーロッパの人々に好まれるのはこのオイゲロールの香りによるものなのです

『ニッキ菓子 ニッキを乾燥させ、粉末にして利用するのは日本独特の利用法 そのニッキ粉が香る和菓子…懐かしくなりつつある駄菓子から、現役の京菓子まで集めてみました。

ニッキ棒』 ニッキの根を乾燥させて短く切り揃えたもので、赤い紙を巻いて数本ずつ束ね、「ニッキ棒」という名で夏祭りや縁日などで駄菓子として売られていたもの。今日ではなかなかお目にかかれなくなってしまった縁日菓子です。

 

 

『ニッキ水』昭和の駄菓子屋全盛期に当時の子供たちに人気を博した清涼飲料水の1つです。

ニッキの香料甘味料・酸味料・着色料を加えて作られた飲料で、子供たちの夏の飲み物として『ラムネ』『蜜柑水』『ひやしあめと並んで駄菓子屋さんの店頭を賑わした定番商品でした

 

 

 

ニッキ飴』 のど飴としての薬効も! 今に人気のニッキ味

 京都名物の和菓子たち『おたべ」『生八つ橋」『八つ橋』 

祇園名物志んこ』は、しろ、ニッキ、抹茶の3種類

 

開運堂『老松』…こちらは長野県 松本市の老舗店の和菓子です。

お抹茶と一緒にいただくのも一興…