山椒 Japanese pepper小粒ながら香り爽やかピリリと辛い香辛力!

山椒は日本及び朝鮮半島南部に自生するミカン科 サンショウ属の落葉樹で、数少ない日本原産のスパイスの1つです。

縄文や弥生時代の遺跡からも出土し、「魏志倭人伝」の中にも、3世紀頃の日本の風俗とともに山椒が山野に自生しているとの記述がみられます。そして「倭国には『薑:しょうが』、『橘:たちばな』、『椒:さんしょう』、『蘘荷:みょうが』もあるが、滋味ある食物として利用することを知らない。」とあり、この頃 我が国のご先祖さまは、山椒を香りや味を楽しみ、肉の臭みを消すといった「滋味ある食物」すなわち薬味や香辛料としては利用していなかったようです。

その後奈良時代になると「日本書紀」や「和名類聚抄」(わみょうるいじゅしょう)の記述から、山椒の葉が生姜や山葵などとともに薬あるいは薬味として使われるようになったことがわかります。

600年ほど前の室町時代 足利将軍家の伝統料理を伝える「大草家料理書」の中には、奴こ豆腐の上に、くずだまりをかけ、けしの実、粉山椒、くるみの実を飾る「あん豆腐」や、「うなぎの蒲焼」に山椒の粉をふりかけるなど現代にも残る調理法が記されています。唐辛子が日本に伝わるのは16世紀になってから… この頃香辛料といえば山椒と胡椒、一部地域で山葵がある程度でしたから、薬味として重宝されていたのもうなずけるところです。

その後は癖のある辛みに好みが分かれて、定番料理以外の応用が進まず、山椒を常食する食文化は京都を中心とした地域に限られていたのですが、近年生産農家さんの努力もあって流通量が増え、通販利用などで新鮮な実が産地から届くようになったことも手伝って、新たな使い方やレシピが考案されてその魅力が再認識されています。

さらに和食に注目が集まったことから海外でも… 日本発のスパイスとしてディップやソース、ドレッシングに、スィーツ、ソーセージなどの加工食品にと斬新な使い方が考案されて人気を集め、大躍進の勢いです。

*ちょと寄り道…ドイツ東部ドレスデンのお肉屋さんFEINKOST Müller のご主人Müllerさんは「しゃぶしゃぶ」「すき焼き」等日本の肉料理を研究するため訪日された経験もある大変な親日家 『山椒』や『柚子胡椒』を使ったソーセージを開発、販売されて、人気を集めています。

爽やかな香りと、ピリリとした辛みが魅力です!

「椒」の字には「芳しい」の意があり、山で育つ香り高い実であることからの「山椒」です。その魅力は爽やかな『香り』と『しびれる辛さ』

新芽は「木の芽」と呼ばれ、手のひらに挟んで軽くパンッ!とたたくと、香りが立ち上りますね。山椒の葉には、香りの元になる精油が溜まる油点があり、山椒の葉を手の上で叩くとこの油点が壊れ、オイルと共に香りが放出されるのです。

『香りの成分』は気分を落ち着かせるアルファビネン、爽やかな青い香りのヘキセノール、柑橘系の香りシトロネロールなどで、その成分は葉に限らず実や幹や枝まで全体に含まれます。

『辛み成分』はサンショオールで、実の部分に多く含まれます。

その働きや効能は

① 辛みと香りが大脳を刺激して内臓器官の働きを活発にします。これにより消化不良や胸苦しさ、みぞおちのつかえ、お腹の冷え、腹部のガスの停滞、それに伴う腹痛等に効果があります。

② 交換神経を刺激して血液循環を良くし、冷え性を改善 新陳代謝を活発にし、基礎代謝をアップさせ、末梢血管の血行を促して身体をあたため、発汗を促したり、利尿作用も期待できます。

③ 殺菌・抗菌作用があり、回虫駆除薬として使われてきました。

④ 麻酔と似た作用があるため青山椒をそのまま食べると、舌が痺れるので注意が必要です

以上のような特性から中国では生薬『大建中湯』の主薬となり、消化機能低下に効くとされ、お屠蘇『屠蘇延命散』の材料にも使われています。

余すところなく利用できる優等生

山椒は雌雄異株で双方とも花をつけますが、花が実になるのは雌株のみです。実をつけないとはいえ、4~5月雄株につく花は「花山椒」と呼ばれ、懐石料理などで香りと色を楽しむ高級食材

一方で、雌株に付く実はまだ青いうち「実山椒」または「青山椒」と呼ばれ、「小粒でピリリと辛い」香辛料として使われます。その後9~10月頃には真っ赤に熟し、裂開して黒い種が飛び出します。

(左)実山椒の赤ちゃん…我が家の庭の一角に鳥の落し物から芽を出して3年目 始めて花をつけ、実らしき姿になりましたが、1週間もすると次第に元気がなくなり、ついには消滅 まだ幼木ですから己の体力に合わせて実を落としたものと解釈?して来年以降に期待です。

(右)秋 実が熟すと真っ赤になり、炸裂して黒い種が飛び出します↓

『木の芽』は3~4月に芽吹く山椒の若葉で、 吸い物の吸い口、田楽みそ、茶碗むし、和えもの、刺身のつまなどに添えられて目に美味しく、手のひらに挟んでパンッとたたくと爽やかな香りが立ち上って、鼻にも美味しく大活躍…

我が家の幼木には芽吹きの頃から落葉する秋まで次々新芽が芽吹きます。それを摘んでお皿に添えるといつもの一品が格段に素敵になるのが嬉しいところ。鋭いトゲが対になって生えていますから気をつけながらの摘み取りです。

『花山椒』花の季節にだけ味わうことのできる珍味です。山椒は雌雄別株なので、雄株に咲く花は受粉が終わった後に実をつけることはありません。そこで古くからこれを摘み取り、季節ならではの味として楽しまれてきました。希少品ゆえ生のものはあまり流通していないのが現状で、山椒の産地有馬などでは佃煮などの販売もされています。花山椒鍋、吸いもの、焼き魚、酢のものに添えて香りと特有の苦味を楽しむ大人の逸品は専門店や料亭でいただくのが現実的のよう…。

『実山椒』は5月末から6月の青くて柔らかい若い実で、別名「青山椒」「青実山椒」と呼ばれます。一度ゆでてから水にさらし、アクを抜いてから使います。 爽やかな香りとピリリとした辛みが初夏を感じさせてくれる香辛料として人気があります。

『粉山椒』山椒の実が青いうち7月頃の実 または真っ赤に熟した実を乾燥させて外皮を粉末にしたもので、「鰻の蒲焼」に、「七味唐辛子」などに使われます。

「山椒をつかみ込んだる小なべ哉」

という小林一茶の俳句は、江戸時代に流行したどじょう鍋に粉山椒をたっぷりと加える様子を詠ったもので、うなぎやどじょうなど脂を含む魚に山椒をかける食し方は粉山椒の消化促進作用が活きる理にかなった食べ方でもあります。摩擦熱で色が悪くならないよう石臼でゆっくり引くのが理想です…。→

山椒は木の皮も食べることができます。皮をはいで灰汁抜きして刻み、醤油で炊き上げた『辛皮 からか』はしびれる辛さでお酒のアテとして有馬や京で親しまれてきた珍味です。

山椒の木の幹は大変に堅くしまって強いので、ステッキにしたり、すりこぎに…。 すりこぎは酢みそやつみれなどに使うとそこはかとない香りが移り、素敵な演出に一役かってくれるのです…

 

童話の中では…

宮澤賢治の残した童話『毒もみの好きな署長さん』では山椒の毒を使った昔ながらの漁法『毒もみ』が事件を解く鍵になって登場しています。以下一部抜粋

…プハラの町は豊かな川と魚に恵まれた町ですが、「火薬を使って鳥をとること」と「毒もみをして魚をとること」を禁じており、毒もみをする者を押えることは警察の一番大事な仕事とされているほどでした。新しい警察署長さんがやってきて間も無く、禁止されている「毒もみ」によって魚が次々と死ぬ怪事件が起こります。たびたび署長さんが毒もみの現場にいて、毒もみに使うものをこっそり仕入れているのを目撃した子供たちはどうやら署長さんが毒もみに関係しているらしいと大騒ぎ 事態を重く見た町長さんは署長さんを訪ねますが、そこで衝撃の事実が発覚します。 …

お話の中で「毒もみ」とは何かを床屋のリチキが教えています。「…山椒の皮を午後の暗闇に剥いて土用を二回かけて乾かし、臼でよくつく。その目方一貫匁を天気のいい日にもみじの木を焼いてこしらえた木灰七百匁と袋に入れて、水の中へ手でもみ出すことです。そうすると、魚はみんな毒をのんで、口をあぶあぶやりながら、白い腹を上にして浮びあがるのです。そんなふうにして、水の中で死ぬことは、この国のことばでエップカップと言いました。これはずいぶんいいことばです…。」

山椒の実には魚類に強い痙攣を起こす成分キサントキシンが含まれるため、川の上流で山椒の粉の入った袋を揉んでその成分を拡散させると、毒の成分によって麻痺した魚がお腹を上にしてぷかぷか浮かび上がって下流に流れ着くので、待ち構えて捕まえるという漁法が『毒もみ』というわけです。

その土地にある固有の有毒植物を使うこの漁方は世界中で行われてきた歴史をもち、日本では主に山椒やエゴの実、地域によってはミョウバンやオニグルミ、タデの葉を使うこともあったとのことで、植物を食料としてのみならず、医療目的、染色そして漁と様々な用途で上手に使っていた昔の人々の工夫には感服するばかりです…。

狩猟生活の歴史と共にあった漁法も日本では1951年施行の水産資源保護法第六条により、調査研究のため農林水産大臣の許可を得た場合を除いて禁止されてしまいました。ちなみに山椒の毒キサントキシンは他の動物に対する毒性は弱いようですから、毒もみは自然にも人にも優しい漁法だったといえそうです。

*山椒の実と並んで「毒もみ漁」に使われた『エゴ』は日本中の雑木林で自生している落葉樹 我が家の庭でも大きく成長して5月には枝いっぱいに白い花をつけ、秋には1cmほどのたまご型の実になって、鳥たちのご馳走になっています。

山椒グルメな鳥たち

*ピリリと辛く魚を麻痺させる毒を持つ山椒の実を好んで食べる鳥もいます。山椒グルメ野鳥の代表は「雉鳩 キジバト」と「目白メジロ」

「雉鳩 キジバト」はブドウ色の体に、ウロコ模様の羽、首に青白黒のマフラーを巻いたおしゃれな鳥で、横浜の我が家周辺でもよく見かけます。「デデッポッポー」の鳴き声は低音の魅力♫ 雌を呼び、縄張りを主張しているにしては穏やかな気がします。

 

コンパクトサイズで抹茶色の羽が美しい「目白メジロ」もお馴染みの鳥で目の周囲がくっきり白いので、すぐわかりますね。

山椒グルメの「キジバト」や「メジロ」に対し、「山椒食 サンショウクイ」はいかにも山椒好きな名を持ちながら虫が好物で山椒を食べないのです。その名の由来は「ヒーリヒリリー」の鳴き声が、山椒を食べて辛~い!と泣いているようだから…(笑)

左から「キジバト」「メジロ」「サンショウクイ」↓

山椒を栽培するなら…

樹高は3mほどに育ち、枝には鋭い棘があり、雌雄異株…雄:オスの木と雌:メスの木があり、雄雌それぞれが近くにあって、花をつけて受粉しないと「山椒の実」が実りません。よって、山椒の実の収穫を期待するならば雄と雌の木の両方を育てないといけません。とはいえ枝や葉を見て雌雄を見分けるのは困難 実をつけるまで雌雄の判別ができないうえに、根が浅く、半日陰を好むため家庭栽培にはハードルが高い木でしたが、近年接木栽培により、台木に雄株を接いだものを「花山椒」、雌株を接いだものを「実山椒」などのネーミングで販売している苗木を見かけますから、購入の目安にされてみてください。以下「朝倉山椒」や和歌山の「ぶどう山椒」など産地の苗木も流通していますから、お好みで選ばれるのも良さそうです。

産地

*『朝倉山椒』棘がなく、香りと辛みが強い実山椒(雌木)として有名

 但馬国の朝倉谷(兵庫県 養父市 八鹿街 朝倉地区)が原産です。

*『ぶどう山椒』和歌山県有田川郡有田川町の特産品で、果実・果穂が大型で葡萄の房のように沢山実ります。 

青実山椒通販利用のお勧め

実山椒は和歌山県が国内生産量の約80%を占め、通販などにも対応されていますので、青実山椒をご希望の場合は5月下旬の収穫期より早めに予約をしておくことをお勧めします。