レシュナー ペッファークヘンを訪ねて…

ザクセン州の首都 ドレスデンから電車に揺られて40分ほどのところにある『プルスニッツ』の街 こじんまりとのどかなこの街には500年近く作り継がれた伝統菓子『ペファークーヘン』があり、今なお8軒の手作り工房と1軒の工場がペファークーヘンを作っています。そのなかでも最古参!創業1813年 のペファークーヘン工房『Pfefferküchlerei Hermann Löschnerレシュナー ペファークヘンお話を聞くことができました。

お店に向かう道すがら、行き交うご婦人の持つ荷物に目が釘付け!…持参の袋とレシュナー提供のロゴ入り袋 それぞれいっぱいに入れられたペファークーヘンの量に驚く私に気づいた彼女は足を止め、袋から次々商品を出して紹介してくれました。「これも、これも美味しいのよ!」「これは是非買って帰ってね!」突然の楽しいひと時に、期待がさらに膨らんで、ペファークーヘン坊やの出迎えを受けながら店内へ…

 200年余り続く店の歴史を守る6代目当主のペーターさん、妻のガビさん、息子のマーティンさんが工房内を案内して、お話を聞かせてくださいました。

工房内はしっとり甘い香りをまとった空気が漂い、お饅頭を蒸すセイロから揚がる湯気をいっぱいに吸い込みながら、和菓子屋さんにいるような心地よさです。

卵もバターも使わない究極のヘルシースィーツ『ペファークーヘン 』の材料は、

小麦粉」と「9種類のスパイス」、「甜菜糖のシロップ」と、とてもシンプル!

スパイスの香りに加え、サトウダイコンを原料に作られる甜菜糖シロップがペファー

クーヘン独特の褐色の色合いと、柔らかな味わいを作り出すとのことで、その製造工程はシンプルながら、素材の特性を活かすことに専心し、時と手間を惜しまないものでした。

先ずは…① 小麦粉と甜菜糖のシロップと蜂蜜を合わせて、こねて…取り出します。

② 生地を木の樽いっぱいに詰め込んだら蓋をして、6週間冷暗所に安置します。その間生地の熟成が進み、時が美味しさとしっとり食感を作ってくれるのです。

③ 樽から生地を取り出して、9種類のスパイスを加えながら、こね直し、薄く延ばして形を整えます。

④180℃のオーブンで焼くこと20分…扉を開けたとたん甘い香りと熱い蒸気が吹き出して、工房内は深い霧に包まれたかのような状態に…

⑤ 生地が冷めるのを待って、ジャムやヌガーを挟んだり、チョコレートコーティングなどの仕上げを施したら出来上がり。

そうして作られたペファークーヘンたち 持ち帰ったものをご覧ください。

スリッパのデザインは、「キリスト教の聖人ニコラウスがクリスマスイブの夜 貧しい娘の家の煙突から投げ入れた金貨が暖炉の脇に干してあった靴下の中に入り、その金貨で娘は身売りをせずに、愛する人と結ばれた…」という言い伝えにちなんだクリスマスシーズン限定のデザイン。 残念ながら運ばれるうちにスーツケースの中で悲しい姿になってしまったのです。

お店を訪問したのは11月末で、ドア前には常に買い物客が列を作る1年で最も忙しい時期でした。そんな中、代々伝わるレシュナーペファークーヘン のレシピや作業を丁寧に教えていただき、恐縮するほどありがたく、嬉しい取材となりました。

お話によると…使われる材料は、小麦粉・スパイス・甜菜糖のシロップの3種類

* スパイスは、「シナモン・クローブ・カルダモン・アニス・コリアンダーカシス・ナツメグ・パプリカ」この9種類を6代伝わる秘伝の割合でミックスしたら、生地1kgに対して10~15gの割合で混ぜ込でいるそうです。

* 甜菜糖シロップは日本の店頭でお目にかかることは難しい甘味料です。ドイツで使用される甘味料の多くは甜菜(サトウダイコン)から作られ、精製の仕方によって、顆粒あり、粉末あり、シロップありとバラエティー豊か。

シロップは精製されていないため、甜菜に含まれるミネラル成分やビタミンが豊富に残り、栄養的に大変優れた健康応援調味料であり、そのミネラル成分はペファークーヘンの甘味に風味とあつみを与えてくれます。

* チョコレートコーティングされたペッファークーヘンを飾るアイシング用ペーストに使う着色料も天然由来のものにこだわり、黄色はサフラン色素から緑はほうれん草色素黒は炭の墨赤はベリー類の色素またはカイガラムシ色素が使われているそう。

写真にある円形と俵形のペファークーヘンは訪問前に路上で出会ったご婦人も一押ししていた商品です。みんな大好き! 『ショコ シュピッツェン Schoko Spitzen 』 

ラズヴェリーと黒スグリから作られるジャムがサンドしされ、コーティングの上質チョコレートと、あっさり生地、甘酸っぱいジャムの調和が絶妙です。私も大好き!幾つでも食べられる。食べたくなる。生地に油脂が入らないから、もたれたりもありません。

『シュピツェン』のようなソフトタイプの賞味期限は3ヶ月 ハードタイプは1年でも大丈夫! これもスパイスと発酵生地のなせる技ですね。

工房に創業200年を記念した手描きのプレートが掛けられていました。同店の創業は1813年ドイツに進行したナポレオン軍が連合軍との戦いに敗れ、そのヨーロッパ支配が終焉を迎えた年です。プルスニッツ は負傷兵のための野戦病院と化し、荒廃していたそうです。初代はそんな中でペファークヘン専門店を創業したのですね。その後も2度の世界大戦、戦後の東ドイツ時代、統一後と困難が続く中、その時代 時代の当主たちのお店とペファークヘンに対する強い思い入れが同店を存続させてきたのだと感じました。黙々と作業に励む7代目マーティンさんの姿に、創業300年に向けてお店の明るい明日が見えました。