Pfefferkuchen  ペファークーヘン 

ペファークーヘンは、ドイツ東部に位置するザクセン州の州都 ドレスデンから電車で40分ほどのプルスニッツの町で、460年あまり大切に作り継がれてきたスパイス菓子です。

その材料は小麦粉、スパイス類、甜菜糖といたってシンプル。甜菜糖は1745年ドイツの化学者アンドレアス・マルクグラーフが飼料用ビート(甜菜またはサトウダイコン)から砂糖を分離することに成功し、1802年に甜菜を原料とする製糖が工業化されたことで、蜂蜜に代わって使われるようになったもので、粉末あり、シロップあり…その精製や仕上げ方により様々な甜菜糖が発売されているため、各ペファークーヘン工房でも特性を活かして使い分けているようです。

            ペファークーへンの歴史

1558年 領主からプルスニッツ のパン職人に「ライ麦パンの他に、スパイス入りのパンを焼いてもよい」との許可が下りました。東洋から運ばれるスパイスは大変な貴重品でしたから、それを使ったパンを焼くためには、請願して、許可を得る必要があったのです。

当時「Pfeffer ペファー」は胡椒に限らず、スパイス全般を指す言葉として使われていましたから、ケーキを表す「クーヘン」と合わせて、『ペファークーヘン』

南ドイツのニュルンベルクを中心に作られていた『ペファークーヘン 』が伝わって、東ドイツザクセン州の町プルスニッツ でもようやく製造の許可がおりたのでした。

以来 クリスマス、結婚式、金婚式、お誕生日…、人々はハレの日のお菓子として人生の節目節目に『ペファークーヘン』を用意してテーブルを囲み、スパイスの香りと優しい甘みを共有しながら、喜びを分かちあい、家族の健康を願ってきました…。

近隣の村や町からからペッファークーヘンを求めて人が集まるようになったプルスニッツは、いつしか『ペファークーヘンの町』と呼ばれるようになり、現在も8軒の手作り工房と、1軒の工場がペファークーヘン を作り続けています。

             ペファークーヘン博物館

町の中心部には『Pfefferkuchenmuseumペファークーヘン博物館』が設けられ、ドア前に立つと、ハートのペファークーヘンを抱いたマスコット坊やがお出迎えしてくれます。

館内は歴代使われてきた機械や道具がゆったりと展示され…

こちらは生地をこねるマシン…のぞき込むとパワフルな回転歯が迫力満点!

生地をのばして、粉を払い、成形作業に進みます。

映像資料を参考に見学すると、作業のイメージが膨らみ、分かりやすい…!

すでにお店を閉じられた工房から移設したオーブンは、薪を焚いて加熱していた時代のもの…  1890年製とあります。

4個並んだ白いレバーは空気量の調整をするためのもので、当時の薪オーブンは現代の電気やガスオーブンのように、1度温度設定をしておけば後はお任せ…とはいかず、焼き窯内の温度を管理するため、オーブンから離れることなく空気口の開閉具合を見極め、空気量を調整する必要があったのです。

                現代の姿は…

現代のペファークーヘンは、四角形に型抜きし、焼きあがりにチョコレートコーティングを施すものと、さらにカラフルなアイシング(砂糖ペースト)でデザインを描いて仕上げられるものが主流になっており、博物館の体験コーナーにも、アイシングの絞り出し袋が並べられています。

               進化と変化

お菓子は見た目の美しさや印象が、ときめきや満足感を大きく右左するものですょね。

460年あまりの歴史をもつペファークーヘン … 

当初は小麦粉にスパイス類と蜂蜜を加えてこねた生地を様々なデザインが彫り込まれた木型に押し付けてレリーフをとり、それを焼いて仕上げられていました。材料からも分かるとおり、その焼き上がりはとても堅く、「口の中でしばらくころがしていると、にわかにホロリと崩れ、蜂蜜が染み出してくる…」っといった感じ。反面その堅さは木型に彫り込まれたレリーフを忠実に美しく浮き上がらせることにつながり、職人魂に火をつけます。木型を彫る専門の職人が現れ、彫り技とデザインの美しさを競うようになっていきました。美しく浮き出たレリーフにくわえ、保存性も十分なスパイス菓子はインテリアとして長い間飾られることもあり、型押しスタイルは17世紀初頭から18世紀半ばに最盛期を迎えたのです。

そんなペファークーヘン は膨らし粉の発見で、転換期を迎えます。

200年ほど前、鹿など動物の角や皮からとれる白い粉末 炭酸アンモニウム:『鹿角塩(ろっかくえん)Hirschhorn-saiz  ヒヤシュホーンザルツ』を材料に混ぜて焼くと、生地が膨らみ、柔らかく焼きあがることが発見され、お菓子やパン作りに使われるようになると、人々の嗜好は軟らかく食べやすい焼き上がりを求めるようにっていきました。生地が膨らむと繊細なレリーフが鮮明に浮き出ることは期待できません。次第に型押し仕上げの硬いレープクーヘンは姿を消し、型抜き仕上げに移行していくのですが、それは大量生産を可能にし、時代の要求に即したものでもありました。

以後 膨らし粉として『重曹』が使われるようになり、さらに改良が重ねられ、『ベーキングパウダー』が開発されると、お菓子作りは格段に進歩していきます。

今となってはなかなかお目にかかれない木彫りの型で抜いて焼き上げたオールドスタイルの女の子…素朴で愛らしい姿に、再び押し型仕上げが復活することを願わずにはいられません。↓

量産化が進むと木彫りの型も回転テープ式になったもよう…

使い込まれた艶が美しい木型たちは、今に続くペファークーヘン工房の店舗の壁や窓辺を飾り、各地の博物館の棚をたっぷり使って展示されて古い時代の記憶を伝えています。

            甘くてスパイシーなお菓子の家

『ヘンデルとグレーテル』のお菓子の家にまつわる品も数多く展示され、どれも個性があり、味わい深くて見飽きることがありません。

深い森の中に置き去りにされた兄妹が、ペッファークーヘンでできたお菓子の家を見つけ、甘くスパイシーな香りに誘われて、つい一口つまみ食い…そこからお話が始まります。

お菓子の家のアドベントカレンダー 

←12月に入ったら、1日ずつ日めくりしながらクリスマスを楽しみに待つ『アドベントカレンダー』は、お菓子の家のペッファークーヘン1枚1枚に数字が書かれて、日めくりの窓になっています♪

現地でお世話になった女性が、マッチ箱ほどの大きさの箱にプレゼントを入れてアドベントカレンダーを作り、「大学で寮生活を送る息子にプレゼントするの…」と満面の笑顔で見せてくださいました。24個の箱に母の愛がたっぷり入った作品はかなり大きなものでしたが、学生寮の壁に飾られ、19歳の法律を専攻するサッカー青年は母を想いながら1日、1日箱を開けたのでしょう…。心のこもった贈り物は子供に限らず、いくつになっても嬉しいですよね。手作りは格別です。

 

19世紀末11月も末のドイツでのこと、ゲラルド・ラング少年がクリスマスを楽しみに待っていると、母親がレープクーヘンを入れた小さな袋を24個作り、毎日1つずつプレゼントしてくれたのです。その習慣は彼が大人になるまで続いたとか…

ゲラルド・ラングはその思い出をもとに、1日、1日扉を開けるとプレゼントが待っていてくれる夢いっぱいのカレンダーを企画し、発売しました。 以来100年あまり… 日めくりの『アドベントカレンダー 』は世界中で愛されています。

こちらもご参考にしてください。*アドベント カレンダー

*『Pfefferkuchenmuseum  ペファークーヘン博物館』Am Markt 3 | 01896 Pulsnitz

035955-44246 | info@kultur-tourismus-pulsnitz.de https://kultur-tourismus-pulsnitz.de/pfefferkuchenmuseum

             ドレスデンといえば…

ドレスデンといえば…ドイツ最古のクリスマスマーケット発祥の地であり、ドイツのクリスマスには欠かせない『シュトレン』もドレスデン生まれです。

               ショートトリップ

さらにドレスデンから西へ30kmほどエルベ川を下った古都マイセンではヨーロッパ初の磁器が生まれました。アウグスト強王(1670~1733)はマイセンにある中世の城アルブレヒト城に18歳の錬金術師ベトガーを幽閉し、磁器の開発にあたらせたのです。ベトガーは白い磁器を作り出すのに8年の歳月を費やし、1710年ようやく完成するも、解放されるどころか続いて染付顔料の開発を命じられ、次第に酒に溺れ、体を壊していくのでした。場内の壁画にはそんなベドガーの様子が描かれています。

アルブレヒト城から北に車で10分ほど走ると、800年の歴史を持つプロシュヴィッツ醸造所があり、エルベ川を見下ろす南斜面にぶどう畑が広がっています。

遠くアルブレヒト城をのぞむリッペ家のブドウ畑 ↓

ドレスデンから鉄道とバスを使って3時間 チェコとの国境にほど近いエルツ山脈の山あいにある村『ザイフェン』は絵本から抜け出したような景色が広がります。この村は1480年に錫(すず)の採掘が始まったことで目覚ましい発展をとげたのですが、採掘量の減少により1800年代半ばには廃坑に… その後坑夫たちが冬の間の副業として勤しんでいた木工のおもちゃ作りが村の主要産業となって、今や村全体がおもちゃ箱のよう… ↓ ザイフェンの夏と冬

https://www.tripadvisor.jp/LocationPhotos-g642134-w2-Seiffen_Saxony.html#17567394

         ザイフェン 木の人形『ペファークーヘン 売り』

昔はこうしてペファークーヘンを携えて行商していたのですね…ただ今 遠く日本は横浜の地まで出張中 ✈️