クィーンエリザベスケーキ

クィーンエリザベスケーキはエリザベス1世統治下16世紀のイングランドで生まれたフルーツケーキです。

エリザベス1世は1558年25歳で国王に即位し、小国イングランドを繁栄へと導き、45年の長きにわたり王国を統治しました。

イングランドが七つの海を征服したこの時代 世界中からドライフルーツやスパイス、ナッツ類が届けられるようになり、それらレーズンやカラント、オレンジやレモンなどのドライフルーツをカリブから運ばれるラム酒に漬け込んだり、砂糖漬けやジャムにする加工法も進化していきました。

そうしてリッチな風味をまとったドライフルーツにナッツ類やスパイス類も加えて焼き上げるフルーツケーキが考案されて、「クィーンエリザベスケーキ」と名付けられました。

女王もこのケーキを大変気に入られ、自ら焼かれたとの記録も残っています。

当時の市民にとっては砂糖やスパイス、ドライフルーツは高価な食材でしたから、クィーンエリザベスケーキは結婚式など特別の日に振舞われるハレの日のお菓子でした。

フルーツケーキが初めてレシピに登場するのは1769年のこと。「花嫁のケーキ」:『ブライドケーキ』という名で紹介されており、それは砂糖漬けのフルーツやナッツをパウンドケーキに入れて焼くものでした。

1800年代になると砂糖の供給量が増え、オーブン機能をもつ「ヴィクトリアン キッチン ストーブ」を備える家庭が増えたこともあり、市民の間で結婚式や休日などの特別な行事のためにフルーツケーキを作ることが流行します。

*Victorian Kitchen stove =コンロとオーブンとストーブの3役を兼ねる道具で、湯沸しのついた4役タイプもありました。

燃焼室で薪や石炭などを燃やし、オーブンとコンロを温めます。コンロ部分はテーブル板のように平らで、ここに鍋をのせて調理したり、お湯を沸かしたり…

 暖房を兼ねていましたから、リビングの中心に設置されるのが一般的でした。

(左)広告ポスター用画像 flickr.com

(右)Victorian Kitchen | Modern Kitchens Ideas UK

                     The marriage of Albert and Victoria

折しも1840年ヴィクトリア女王の結婚披露パーティでは、直径90cm重さ136kgもある巨大なウェディングケーキが用意されました。

このケーキは世界中から運ばれた砂糖やフルーツ、ブランデーをふんだんに使った贅沢なもので、薔薇を愛した女王らしく、フルーツケーキの周囲に可憐なローズガーランドのシュガーアイシングの細工が施され、華麗に装飾されたものでした。

砂糖と卵白を練り合わせて作るアイシングを使って装飾するケーキを見慣れていなかった当時の国民は、白く巨大なケーキを「フルーツケーキのおばけ」と評し、あまり評判がよろしくなかったようです。

ともあれ、アイシング仕上げは次第に模倣されるようになって、フルーツケーキにアイシングで装飾して仕上げる白いウエデイングケーキが一般化していきます。

女王が身につけたのは淡いクリーム色で無地のサテン地のウエディングドレスで、デボン州に伝わる手織りのボビンレースとオレンジの花で飾られていました。

 白いドレスと白いアイシングで装飾されたウエディングケーキ…『ホワイトウエディング』のスタイルはヴィクトリア女王のこのウエディングから始まったのです。

      The marriage of Friedrich III and Victoria

ヴィクトリア女王の結婚式から18年後に登場するのが、「塔のように高いウェディングケーキ」です。1858年、ヴィクトリア女王の長女であるヴィクトリア王女とプロイセンのフリードリヒ・ヴィルヘルム王子との結婚に際し用意されたのは、高さ約2.1mの巨大かつエレガントなケーキで、3段構造になっていて、うち上の2段はすべてシュガークラフトで、食べられるのは一番下の段だけでした。

それはロンドンのセント・ブライド教会にそびえる鐘楼をモデルにしたもので、その後、一般市民も、こぞってこの三段ケーキを真似したため、このスタイルは瞬く間に広まっていきました。

(左)ヴィクトリア王女の三段ケーキ brides.comjpg

(右)セント・ブライド教会 http://www.stbrides.com

3段にはそれぞれ役目が生まれます…

下段は、結婚式の招待客と一緒に分かち合って食べる

中段は、出席できなかった方に届ける    

上段は、1年後の結婚記念日もしくはBaby誕生の際にアニバーサリーケーキとしていただきます。

*「未婚のゲストがケーキをお土産にもらって帰り、枕の下に入れて寝ると、夢の中に将来の結婚相手が現れる」といわれ、人気を博しました。

*たっぷりラム酒とスパイスが効いたケーキの保存性は高く、1年経過くらいではビクともしません!お土産に持ち帰った王族のウエッディングケーキが30〜40年後のオークションに出品されることもあるくらいですから…!

      The marriage of Charles and Diana

1981年 数千人が出席したチャールズ皇太子とダイアナ妃の披露宴には、27台のウエディング・ケーキが用意されたそう。メインケーキを担当したのは、英国海軍料理学校の菓子部門の長であるデイヴィッド・エイヴリー氏 何段にも積み重ねられたフルーツケーキは小さな銀の箱に分けられ、お土産として招待客に配られたのだとか…

 harpersbazaar.com

                       The marriage of William and Catherine

2011年 ウィリアム王子とキャサリン妃は、英国のパティシエ、フィオナ・ケアンズ氏に依頼し、8段重ねの伝統的なスタイルのウエディングケーキをセレクトしました。フルーツがたっぷり使われたケーキは白いアイシングで覆われ、砂糖で作られた花々でデコレーションされた繊細で美しい作品 harpersbazaar.com

エリザベス1世が自らも作られたと伝わるフルーツケーキは400年の年月を経た今でも新生活の門出を祝う華やかなウエディングケーキとしてアイシングで飾られ、またラフなティータイムにも欠かせないケーキとして愛され続けているのです。

 

           * ドライフルーツのラム酒漬け *

フルーツケーキに欠かせないドライフルーツのラム酒漬け…

身近にある材料で簡単に作れ、幅広いレパートリーで活躍してくれますから、1瓶作ってみませんか?

先ずは『レーズンのラム酒漬け』からがお勧めです。以下Let’s try…

漬け込み用の瓶を煮沸して準備してください。

《材料》

干しぶどう … ワックスのかかっていないもの

ラム酒 … 『マイヤーズラム』が入手しやすく、お勧め

      700ml、200mlの小瓶もあります。   (透明のホワイトラムではなく、ダークラムを選んでください。)

作り方

① 瓶に干しぶどうを7分目まで入れる…干しぶどうがラム酒を吸って膨らむので、分量は6~7分目までにしておいて…

② 干しブドウがかくれるまでラム酒を注ぎ込む… 瓶の口にラップをかけてから蓋をする(雑菌対策のおまじない?)

*最低3ヶ月は待ちましょう。

できれば1年、さらに2年ものは熟成してまろやかになり、素敵な大人風味を身につけます。

市販のアイスに添えれば、極上品に早変わり…これが1番簡単なレシピです!

お試しいただきたいレシピはたくさんありますから、追い追いご紹介するとして、先ずは自家製『レーズンウィッチ』のレシピを添えますね…

*レーズンのラム酒漬けは常温保存で3年ほどで使い切りましょう…腐敗、変質はありませんが、3年を過ぎる頃からぶどうの糖分が溶け出して、瓶の底に白い結晶になって沈殿します。こうなるとぶどうが痩せてくるので、3年以内を目処に使ってください。

                               レーズンウィッチ  

 

《材料》 2個分         

 マスカルポーネチーズ  大3                   

 ラムレーズン      大1~      

 市販のビスケット    4枚

 ハチミツ        小1~

《作り方》

① マスカルポーネチーズを容器にとり、室温において柔らかくしておきましょう。

② ①にレーズンを加え、はちみつ、お好みで漬け込みのラム酒も加えて、全体が均一になるよう良く混ぜます。

③ ②をビスケットに挟み、召し上がれ…

*1つずつラップに包んで冷蔵庫へ…3時間ほど待つと、チーズの水分がビスケット生地に移って、しっとり芳醇なラム酒の香り豊かな大人スィーツの出来上がりです。

*冷凍すると、アイス感覚で、また楽しい…

生クリームを固くあわ立ててラムレーズンを混ぜ込んで同様に作ることもできますクリームが柔らかいので、挟む作業が不安定ですが、水分が多い分クッキー生地が水分を吸ってし~っとり こちらも素敵な仕上がりです。

 

*こちらは2年もの … ぷっくりジューシーでアルコール感もまろやかになって大人の風格 …

時が作ってくれる優しく奥深い美味しさを味わって…

*レーズンが漬かっていたラム酒は香りと甘味が移ってまた美味しい!イギリス湖水地方で教えてもらった『カンバーランドラムバター』にして、スコーンに添えるのがお勧めです。 別途ご紹介いたします。